相鉄流インバウンド企画 出発合図、定期券発券などの体験プログラムを訪日客に

2019年6月14日(金) 鉄道コムスタッフ

横浜市の東西を軸に、横浜~海老名・湘南台間を結ぶ相模鉄道(以下、相鉄)。総延長は約38キロとコンパクトですが、大手私鉄の一つです。

相鉄の鉄道路線は神奈川県内のみで、他社線との乗り入れもないため、現在は自社線で完結しています。1日あたりの平均利用者は約63万人と決して少なくありませんが、同社では沿線住民がより遠方に、また、より広範なエリアから相鉄沿線にという施策を進めることで、さらなる利用者増につなげる構想を持っています。そうした交通ネットワークの拡充策として現在、JR線、東急線との相互直通化の工事が進められ、そのうちJR線との直通線(西谷~羽沢横浜国大間など)が2019年11月末に開業する予定です。

相鉄では、相互直通運転開始を見据え、さまざまな取り組みを進めています。その中には、横浜方面への観光客の流入、特に訪日外国人旅行客の増加に対応する取り組みも含まれ、案内業務の研修などに力を入れているということです。また、相鉄の横浜駅を中心とした横浜西口エリアでは、訪日外国人への観光案内などを街ぐるみで行う協働型のネットワークがあり、横浜西口エリアマネジメントなどが関わっています。

相鉄8000系車両。今回のプログラムでは、8000系の快速列車などを対象に出発合図体験も行われました
相鉄8000系車両。今回のプログラムでは、8000系の快速列車などを対象に出発合図体験も行われました

いわゆるインバウンド対応の一環として、相鉄と横浜西口エリアマネジメントの両者が主体となり、「インバウンドツアー 相模鉄道職業体験会」と題する催しが企画、開催されました。今回はその職業体験のうち、駅係員編として6月6日に横浜駅で行われたプログラムについて紹介します。相鉄としては、訪日外国人に対する接客、案内等の研修、横浜西口エリアマネジメントとしては、相鉄と横浜駅周辺のPRや、観光案内の実践といった点で意義がある取り組みとなりました。今回の外国人客は、日本への留学を視野に入れた米国の学生、院生と、その保護者、教師など総勢40人余り。受け入れにあたった団体、通訳のサポート団体、横浜観光コンベンション・ビューローの協力もあって実現したプログラムです。

出発合図、磁気定期券発券、構内アナウンスなど

駅係員の体験プログラムは、6月6日(木)の午前(10時~12時)に行われました。横浜駅の改札脇の案内カウンターから入場し、駅事務室を経て駅長室に入り、まずは駅長の臼井さんからの挨拶がありました。通訳代わりに用いられたのは、相鉄が訪日外国人へのサービス向上を目的に導入した通訳機「POCKETALK(ポケトーク)W」。鉄道運行の安全性確保と、そのための駅員の役割などが話され、訳された英文が流れると、それに呼応するように声、拍手が上がりました。駅長挨拶に続いては、副駅長以下、今回のプログラムを支える駅員各位の自己紹介があり、プログラムの説明、相鉄の概要紹介などが行われました。

今回のプログラムを担当した駅員の皆さん。中央は通訳機を手に挨拶する臼井駅長。歓迎メッセージなどが英語で流れると、より大きな拍手が起きました
今回のプログラムを担当した駅員の皆さん。中央は通訳機を手に挨拶する臼井駅長。歓迎メッセージなどが英語で流れると、より大きな拍手が起きました

実際の体験は、3つの班に分かれ、主に3つの業務をローテーションで行う方法でこの後スタート。取材同行した班の流れは、出発合図、磁気定期券発券など、構内アナウンスでした。いずれも、鉄道各社が子ども向けなどで実施する仕事体験イベントと比べ、より実践的な内容という印象を受けました。

出発合図は、実際の営業列車を対象に、「ドアを閉じてもよい」と「ドアよし」の合図を手の動作で伝えるというもので、制帽、手袋着用で行われました。体験者は駅員付き添いのもと、真剣な面持ちで合図を実行。手順は、乗車する客がいないことを確認後に挙手、列車ドアとホームドアが閉まったら手を下ろす、安全を確認し再度挙手の3段階でした。3番線で10時30分発の特急、同40分発の急行を、2番線では10時31分発の快速をそれぞれ定刻通り見送り、体験は終了。手袋は記念品として、体験者にそのまま渡されました。いいお土産になったようで、歓声が上がりました。

2番線での出発合図の様子。ドアが閉まるまで手を挙げる動作が続きました
2番線での出発合図の様子。ドアが閉まるまで手を挙げる動作が続きました

次は、定期券売り場に移動し、カウンターでの磁気定期券の発券業務体験などが行われました。参加者相互で、買う側と売る側につき、実物を受け渡しするというスタイルで、定期券は本人の名前や生年月日入り。名前は、アルファベットでの入力でした。係員立ち会いでの作業でしたが、機械の操作で当惑する様子もなく、どの体験者も円滑に発券していました。今回はアメリカからの参加者でしたが、州が異なる3つの学校からの混成チームということで、鉄道や定期券との接点は各人各様。それでも定期券への関心は高かったようで、自分の名前入りの定期券を熱心に見入っていました。

この後は、窓口での外国人旅行者からの問合せを想定したシミュレーションも行われました。ポケトークを使う、使わないは駅員の判断で、使わずに対応する駅員も複数いました。通訳機の検証、外国語対応の研修という点で、一定の成果はあったようです。

定期券申込書に、名前と生年月日を記入。設定は、横浜~平沼橋間の1か月通勤用でした
定期券申込書に、名前と生年月日を記入。設定は、横浜~平沼橋間の1か月通勤用でした
発券業務体験の様子。発駅、着駅、アルファベットの入力など、タッチパネルを滞りなく操作していました
発券業務体験の様子。発駅、着駅、アルファベットの入力など、タッチパネルを滞りなく操作していました
英語での質問に対し、大きなジェスチャーを交えて回答。通訳機を使って対応する場面もありました
英語での質問に対し、大きなジェスチャーを交えて回答。通訳機を使って対応する場面もありました

最後は、構内アナウンス。駅事務室の一角にある放送装置を使い、実際に横浜駅構内で流れるアナウンスをしてもらうというもので、用意された文例に沿って行われました。はじめに現職の駅員が日本語でアナウンスをした後、その英文を体験者が読むという流れで、「歩きスマホ」の注意、駆け込み乗車NGの案内、「声かけサポート運動」の呼びかけ、テロ警戒に関する案内の4パターンがアナウンスされました。"For your safety, do not use mobile phones…"といった案内がネイティブの発音で聞くことができ、リスニング学習の一面も。各フレーズ終了後は、事務室全体で拍手が起きました。

構内アナウンスの予行練習は、駅長室で行われました。後方の額は、横浜駅歴代駅長の名札を収めたもの
構内アナウンスの予行練習は、駅長室で行われました。後方の額は、横浜駅歴代駅長の名札を収めたもの
構内アナウンス本番の様子。放送装置の周りには、構内各所のモニター装置などもあります
構内アナウンス本番の様子。放送装置の周りには、構内各所のモニター装置などもあります

各班のプログラムを終え、駅長室に全員が集合した後は、発行した磁気定期券(無効化済み)、本人の写真入りカード、相鉄オリジナルグッズなどがプレゼントされました。参加者からの感想も相次ぎ、鉄道運行の正確性、安全性が実感できたこと、楽しいアクティビティだったことなどの声がありました。改札を出る前には、全員集合での写真撮影も。至れり尽くせりのプログラムでした。

「相鉄は都心直通。」の構内掲示。同社では2019年を「相直元年」として、インバウンド向けなどの取り組みを強化しています
「相鉄は都心直通。」の構内掲示。同社では2019年を「相直元年」として、インバウンド向けなどの取り組みを強化しています

職業体験に参加した学生、院生は、日本の鉄道の舞台裏を見学するとともに、実際の駅業務の一端を体験し、貴重な機会になったようです。留学、観光など、今後の訪日目的はさまざまながら、また日本を訪れたいという声が多く聞かれました。実体験を通じて、相鉄への理解、関心も少なからず伝わったことでしょう。参加者や関係各位の笑顔、参加者から相鉄関係者への歓声や拍手が印象的な2時間でした。

職業体験会は6月19日にも行われる予定。次のテーマは、電車運転体験です。

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