鉄道総合技術研究所(鉄道総研)は13日、「自律型列車運行制御システム」を開発したと発表しました。

現在の列車運行では、乗務員が各列車に乗り込んでこれを運転しているほか、駅のポイント(分岐器)などは、駅に設置した機器類や、有人の指令室などから制御されています。鉄道業界では現在、ドライバレス(無人)運転の技術開発が進められている段階ですが、鉄道総研は今回、さらに省人化、省力化を可能とする、自律型のシステムを開発しました。

本システムは、車上に集約した運行に関わる情報に基づき、ドライバレス運転で走る列車自らが進路上の安全を判断し、踏切などを制御しつつ安全かつ柔軟な運行を実現するもの。列車自身がポイントや踏切を制御できるほか、地上に支障物があった場合も、これが取り除かれた場合は自らが判断して運転を再開することができるものです。地上の信号設備によらず、車上のみで列車停止から運転再開判断までを自動化するシステムは、世界初となる技術だといいます。
鉄道総研は、本システムの構築にあたり、カメラやLiDARセンサーを使用した線路内や沿線の「前方支障物検知技術」、線路内・沿線や車両などの状態を集約し、「車上で自動的に運行判断をする技術」、無線通信により「車上から地上の転てつ機や踏切を直接制御する技術」、広域での「運行管理を自動的に行う技術」、公衆通信回線の利用やサイバーセキュリティも考慮した「列車間通信・情報共有技術」の5つの要素を開発。各要素技術を適用した本システムのプロトタイプの実証試験を、鉄道総研の研究所にある試験線にて実施し、それぞれの機能を確認したと説明しています。

鉄道総研では、本システムでの自律運転により、車上での自動的な運行判断や自動的な運行管理が可能となるため、運転業務のみならず指令など運行管理業務を含めた省人化が図れると説明。また、列車本数が少なく、駅の配線が単純で規模が小さな地域鉄道では、機器室などの削減も可能となるといいます。加えて、前方支障物検知技術は、自律運転だけではなく、踏切のある一般的な路線でのドライバレス自動運転を進めるための技術としても活用できるとのこと。さらに、鉄道ダイナミックマップを活用した情報共有ならびに運行判断の自動化技術、あるいは運行管理の自動化技術は、現在の運行管理業務の省力化に活用することもできるとしています。