JR東日本は6日、国土交通大臣に対し、旅客運賃の上限変更認可を申請した。
改定後の大人普通運賃は、東京~新宿間の現金支払い時運賃が260円(現行210円)、同IC運賃が253円(現行208円)、東京~大宮間の現金運賃が620円(現行580円)、同IC運賃が616円(現行571円)、東京~仙台間が6270円(現行6050円)、東京~長野間が4180円(現行4070円)など。全体の改定率は、普通運賃7.8パーセント、通勤定期12.0パーセント、通学定期4.9パーセントとなる。
今回の運賃改定では、首都圏に設定している他のエリアより低廉な「電車特定区間」「山手線内」の区分を廃止し、「幹線」に統合する。10キロ以下では、税抜運賃を4.7パーセント引き上げるほか、キロ数に賃率を乗じて算出する11キロ以上の幹線の運賃は、11キロ以上300キロ以下に適用する賃率を16.96円、301キロ以上600キロ以下に適用する賃率を13.45円に引き上げる。また、地方交通線の運賃は現行と同様、幹線の賃率を1.1倍した額とする。601キロ以上に適用する賃率は据え置く。通学定期は、家計の負担に配慮して価格を据え置くが、電車特定区間および山手線内の通学定期料金は、両区分の廃止により値上げとなる。
このほか、JR他社をまたがる際には、新たに「通算加算方式」を導入し、加算額を設定する。これまで適用してきた各社共通の運賃に、JR東日本の値上げ相当額を加算額として加えるもので、JR東日本区間の乗車距離に応じて適用する。
さらに、これまで電車特定区間・山手線内で運賃に加えて収受してきた「鉄道駅バリアフリー料金」は、この改定にあわせて廃止する。なお、同料金の収受を取りやめた後も、同社はバリアフリー設備の整備を継続して進めていくと説明している。
なお、幹線・地方交通線のIC運賃における消費税の転嫁方法は、今回の運賃改定で、現在の電車特定区間・山手線内と同様、1円単位の端数を四捨五入から切り上げに変更する。従来はIC運賃が現金運賃よりも高い区間と低い区間があったが、今回の変更により、小児運賃の一部区間を除いて、IC運賃は現金運賃よりも低額または同額の設定となる。
そのほか、競合路線対策として通常よりも低廉な運賃を適用する「特定区間」は、18区間を廃止し、12区間のみとする。廃止対象は、上野・日暮里~成田間、品川~田浦・横須賀・衣笠・久里浜間など。内方調整にともなう区間の改廃も実施する予定だという。
加えて、今回の運賃改定により、東京~熱海間では東海道線(JR東日本の路線)と東海道新幹線(JR東海の路線)で運賃が異なる体系となることから、運賃改定以降は両線を別の線路として取り扱う。現在は、新幹線経由の乗車券で在来線に、在来線経由の乗車券で新幹線に、それぞれ乗車が可能となっているが、運賃改定以降はこれが不可能となる。なお、定期券における取り扱いの変更はない。新幹線定期券「FREX」「FREXパル」では従来通り在来線を利用できるほか、条件を満たす在来線定期券でも、特急券の購入で新幹線が利用できる。
JR東日本は、今回の運賃改定の申請について、新型コロナウイルス感染拡大以降の利用者減少や、エネルギー・資材価格の高騰、求められる従業員の待遇改善などといった環境下で鉄道事業の収益確保が厳しさを増す一方、さまざまなる設備投資や修繕等に必要な資金を安定的に確保することが困難な状況となっていると説明。今後も鉄道事業をサステナブルに運営していくため、今回の申請に至ったとしている。
また、今回の運賃改定で廃止する、電車特定区間および山手線の区分については、国鉄時代に当時の運行形態や他の鉄道事業者との競合等を勘案して設定されたものの、現在は当時の状況とは大きく変化していると説明。これらの区分を幹線に統合することで、わかりやすい運賃体系を実現するとしている。12区間の特定区間についても、路線形態の変化などで直接競合しない区間などがあることから、今回廃止を決めた。
JR東日本の運賃改定の実施は、2026年3月を予定。消費税率の改定によるものを除くと、同社発足以来の改定となる。なお、特急料金やグリーン料金などの料金の改定はない。
近年は、鉄道各社の運賃改定が相次いでいる。JRグループでも、2023年にはJR四国が運賃改定を実施。2025年4月1日には、JR北海道、JR西日本、JR九州の3社が運賃改定を予定している。