駆け抜けた名列車

「阪和線特急」 - 私鉄買収路線の華 料金不要の特急

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「阪和線特急色」と言われた、こげ茶とクリーム色のツートンカラーをまとうモハ52004(後のクモハ52004)。小窓に「特急」の2文字が描かれている。鳳電車区 1950年10月 写真=浦原利穂

大阪と和歌山を結ぶ都市間連絡路線である阪和線は、私鉄の阪和電気鉄道を前身としている。1930(昭和5)年に阪和天王寺(現・天王寺)~阪和東和歌山(東和歌山を経て現・和歌山)間が全通し、電車による急行の運転を開始。その後は特急、さらに速い超特急を加え、並行する南海鉄道(現・南海電気鉄道)に対抗した。しかし、戦時体制下で一時期、南海鉄道と合併した後、44(昭和19)年には国有化され阪和線となる。

第2次大戦後の復興にあたり、50(昭和25)年から改めて特急の運転を開始する。そのために阪和線に転入した車両は、東海道本線京阪神間の急行(通称・関西急電)への80系電車投入で余剰となった流線形モハ52形、半流線形モハ43形、そして付随車のサハ48形とサロハ66形の合計13両。両端がモハ、中間がサハまたはサロハ(全室3等車として使用)の3連4編成を組成、1両が予備車となった。この特急は、天王寺~東和歌山間を55分で結び、朝のラッシュ時の上り、夕方のラッシュ時の下り、それぞれ2本ずつを設定。また30分間隔の急行も終日運転している。

しかし、元・関西急電の名車による阪和線特急での活躍は長く続かず、55~56(昭和30~31)年に新鋭の70系電車4連に置き換えられた。2ドアから3ドアに変わり貫禄が下がったが、クリーム色とライトグリーンの専用塗色の新製車が投入されており、阪和線特急への期待の高さがうかがえる。

阪和線の特急と急行は乗車券だけで利用でき、その他の料金が不要という異色の存在だった。当時、特急券や急行券を必要とする本来の特急、急行は客車列車しかなく、電車の列車は別物と扱われたのである。しかし、58(昭和33)年に東海道本線の電車特急「こだま」が登場するとこの考え方も成り立たなくなり、阪和線の特急と急行はそれぞれ快速、直行に改称された。

文・松尾彦孝

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    1953年秋から54年春にかけて、モハ52、モハ43、サハ48、サロハ66は、こげ茶一色の地味な塗色に塗り替え られたほか、乗務員ドア増設、グローブ形のベンチレーター化などの改造を受けた。鳳電車区 1954年2月 写真=高橋 修

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    阪和線の「特急」は70系化の後の1958年に「快速」へと改称された。天王寺駅1974年10月 写真=岩堀春夫

<週刊朝日百科>歴史でめぐる 鉄道全路線 国鉄・JR

第42号(阪和線・和歌山線・桜井線・湖西線・関西空港線)

2010年4月27日(火)発売

第42号の表紙画像
朝日新聞出版発行

  • ●懐かしい鉄道風景探しの旅 天王寺から泉州をゆく61.3キロの通勤幹線
  • ●クロニクル 2度の買収を経て成長した歴史
  • ●駆け抜けた名列車/阪和線特急
  • ●往年の車両たち/モハ52形電車、70系電車ほか
  • ●今を走る車両/381系電車、281系電車ほか
  • 【連載】
    • 鉄道史の舞台/旅行の大衆化と『鉄道旅行案内』
    • 評伝・鉄道の人/木下淑夫

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