JR北海道の721系、JR東海のキハ75系、JR西日本の221系、JR九州の811系は、いずれもJRグループ発足直後に登場した一般型の車両。現在では主に普通・快速列車で使われています。しかし、各形式がデビューした後の一時期は、運賃とは別料金が必要な急行列車で使われていたこともありました。

この4形式のうち、定期急行列車で使われたことがあるのは、キハ75形のみです。同形式が使われていたのは、関西本線名古屋~奈良間を走った急行「かすが」。1999年の同列車へのキハ75系導入から、同列車が廃止される2006年まで使われていました。
キハ75形以外の、721系、221系、811系の3形式は、急行の定期運用を持っていたわけではなく、繁忙期に走る臨時急行で使われたことがありました。

国鉄→JRでは、普通・快速列車は通勤・近郊型車両、急行・特急列車は専用車両を使用するのが基本です。しかし中には、これら4形式のように、普通・快速列車用車両を優等列車に投入する事例も見られました。追加料金が必要ながら、車両は一般列車と同じという、ある意味で「乗り損」なこれらの列車は、「遜色急行」「遜色特急」と呼ばれることもありました。
遜色急行は、先の4形式によるもののほか、中央本線の「かいじ」(急行時代)で使われた115系(大部分は急行型の165系)、津山線の「つやま」で使われたキハ40系など、国鉄時代からJR発足後まで、数多く存在しました。特に「つやま」は国内最後の定期昼行急行(2009年廃止)でしたが、その実態は、同じ区間を走る快速「ことぶき」と同じ車両を使用し、停車駅が1駅しか変わらないにも関わらず、急行料金が必要な列車というものでした。
721系、キハ75形、221系、811系も、「かいじ」「つやま」などと同様、普通・快速列車用の車両が上位種別に使われた、という点では「遜色急行」です。しかしこれら4形式は、デビュー時はいずれも転換クロスシート車両として製造されています。そのため、ボックスシートを装備していた国鉄急行型車両(165系やキハ58系)と比べれば、座席は遜色ないどころか上質だったともいえそうです。

なお、7月から毎週金曜日に運転される、仙台エリアの臨時特急「イブニングウェイ」では、一般型気動車のキハ110系が使われます。ただし、同列車に使われるのは、一般仕様車ではなく、もともと急行列車用に製造されたリクライニングシート装備車。座席はキハ183系などと同じものを使用しているので、形式だけで捉えれば「遜色特急」となりますが、設備面ではかつての「かすが」に近いものになるといえます。