鉄道コム

鉄道コらム

日本の電車の運転台位置が「左」にある理由とは? 中には「右配置」に「まんなか配置」の車両も

2024年7月31日(水) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

日本の鉄道車両は、進行方向に向かって左側に運転席が設置されているものが多くなっています。同じ左側通行の乗り物でも、クルマでは向かって右側の配置、つまり「右ハンドル」が基本です。なぜ鉄道では「左ハンドル」に相当する位置にあるのでしょうか。

進行方向に向かって左側に配置されることが多い、日本の鉄道車両の運転席
進行方向に向かって左側に配置されることが多い、日本の鉄道車両の運転席

その理由は……と断定的にご紹介できればいいのですが、実際には「これ」と説明できる確かなものはないよう。諸説ある、という状況です。

よく言われるのは、左側通行の鉄道では、線路の左側に信号を建てているから。特に蒸気機関車の時代には、運転席からの前方視界は、巨大なボイラーにさえぎられてしまいます。左側に信号を建てるのであれば、右側からではボイラーが邪魔なため、左側を運転席にした、という説です。

もう一つは、左側通行では進行方向左側にホームが来ることが多いからというもの。現在のように電気的な保安装置によって列車の衝突を防ぐ仕組みが構築される前、単線区間では正面衝突を避けるため、1つの区間(閉塞)には物理的な証明(「タブレット」や「票券」)を持った列車しか入れないという仕組みが使われていました。タブレットなどを受け渡しするには、左側通行ではホーム側に運転席があった方が便利です。特に、国が建設した主要幹線や地方ローカル線では、駅のホームは進行方向左側にある「相対式」が多くなっていました。そのため、運転席も左側の配置になった、という説です。

鉄道車両の運転席は左側配置が主流となっている日本ですが、必ずしも左側に置かれるというわけではありません。たとえば路面電車の場合は、運転席は左右どちらも見やすい中央配置が主流です。また、都営地下鉄大江戸線などの比較的新しい地下鉄や、モノレール、新交通システムでは、右側配置とすることが多くなっています。これらの路線では、駅の建設コスト削減のため、上下線で1つのホームを共用する「島式」としています。この場合はほとんどの駅で進行方向右側にホームが来るため、確認のしやすさなどを理由に、運転席は右側配置となっています。

面白いところでは、関東鉄道の竜ヶ崎線の車両は、竜ヶ崎駅方面が右側、佐貫駅方面が左側という、前後非対称の配置となっています。全長4.5キロのミニ路線である竜ヶ崎線では、3つある全ての駅のホームが同じ側に設置されています。竜ヶ崎駅行き基準では右側にしかホームがないので、ホーム確認のしやすさのため、このように珍しい運転席配置が採用されました。

関東鉄道竜ヶ崎線のキハ532形。運転席の配置は、竜ヶ崎駅方面の運転台(画像右)は向かって右側、佐貫駅方面(画像左)は向かって左側と、車両前後で異なっています
関東鉄道竜ヶ崎線のキハ532形。運転席の配置は、竜ヶ崎駅方面の運転台(画像右)は向かって右側、佐貫駅方面(画像左)は向かって左側と、車両前後で異なっています

鉄道コムの最新情報をプッシュ通知でお知らせします無料で受け取りますか?

鉄道コムおすすめ情報

画像

鉄道カメラマンの舞台裏とは

鉄道カメラマンの仕事には、予想外のできごとも!? プロの鉄道カメラマンである助川康史さんが、ハラハラな取材行をご紹介!

画像

東武「スペーシア」台湾へ

「日光詣」スペーシア先頭車を、台湾の台北駅で展示。2025年度冬からを予定。

画像

阪神1000系新デザイン

阪神1000系の「Re Vermilion」デザインが発表。第1編成は8月下旬に登場予定。

画像

新型「指定席券売機」

JR東日本が、7月から新型の指定席券売機を順次導入。画面はシンプルな構成に。従来機も10月に画面を更新予定。

画像

元泉北車のカラーどうなる?

泉北高速鉄道が南海に吸収合併されてから約3か月。元泉北車の色はどうなる?南海に今後の予定を聞きました。

画像

7月の鉄道イベント一覧

いよいよ夏本番、鉄道イベントも多数。7月のプラン立てには、鉄道コムのイベント情報をどうぞ。