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旅客が乗れない「カシオペア」? めったに走らなかった「もう1両の車両」とは

2025年7月6日(日) 鉄道コムスタッフ 西中悠基

寝台特急「カシオペア」は、1999年にデビュー。2015年の北海道新幹線開業まで上野~札幌間で定期的に運転されており、以降も団体臨時列車で活躍してきましたが、6月をもって営業運転を終了しました。

6月に引退した「カシオペア」。こちらの車両は、12号車「ラウンジカー」です
6月に引退した「カシオペア」。こちらの車両は、12号車「ラウンジカー」です

「カシオペア」に使われたのは、専用車両のE26系客車。かつて夜行列車の代名詞だった「ブルートレイン」とは異なり、ステンレス製車体を採用した銀色の車両です。編成両端は展望室が設けられており、上野方の1号車は最上級個室「カシオペアスイート」、札幌方の12号車はフリースペースの「ラウンジカー」となっています。

12両編成を組む「カシオペア」の客車ですが、実は用意されているのは13両。普段は動かない「もう1両のカシオペア」が存在しているのです。

その1両は、カヤ27形を名乗る車両。E27系のように新製された車両ではなく、ブルートレインの一員だった24系を改造した車両です。外観は他のE26系と揃えられ、銀色の塗装に5色の帯が入るデザインとなっているのですが、車体構造そのものに手が加えられたわけではないので、かつてのブルートレイン時代の面影を残しています。

めったに営業運用に入らなかった「もう1両のカシオペア」、カヤ27形(superkaijiさんの鉄道コム投稿写真)
めったに営業運用に入らなかった「もう1両のカシオペア」、カヤ27形(superkaijiさんの鉄道コム投稿写真)

カヤ27形が用意された理由は、ラウンジカーの予備車を確保するため。フリースペース車両となっているE26系の12号車ですが、展望室は2階部分に設けられており、その床下には発電機が設置されています。この発電機は、他の車両も含めた「カシオペア」の客車12両が使用する電気を供給するためのもの。ラウンジカーが連結されていなければ、各客室の照明やシャワー、食堂車の調理システムなどが、すべて動かなくなるのです。

目立たないながらも重要な設備を搭載しているラウンジカーですが、車両検査や、突発的な故障によって、運用を離脱することも考えられます。カヤ27形は、そのような場合にも「カシオペア」の運転を止めないために用意されたのでした。

架線から電気を取り入れている電車や、走行用エンジンによる動力で発電もできるディーゼルカーと異なり、自走するための機器を持たない客車は、車内照明などのサービス用電源を、何らかの手段で確保する必要があります。そのため、ブルートレインでは、床下に発電用エンジンを搭載した車両を複数連結するか(14系)、編成全体に供給する電気を発電するエンジンを搭載した「電源車」を連結する方式(20系、24系)のいずれかが、主に採用されました。

24系の電源車(Pecker Sakaiさんの鉄道コム投稿写真)
24系の電源車(Pecker Sakaiさんの鉄道コム投稿写真)

カヤ27形は、もとは「北斗星」で使われていた、24系の電源車。E26系のラウンジカーのように、一般旅客が乗れるスペースはありません。そのため、カヤ27形が連結されている間は、乗客は12号車のラウンジスペースを利用することはできませんでした。

カヤ27形は、「カシオペア」が定期的に運転されている期間は何度か運用実績があったのですが、2015年以降に団体臨時列車で運転されるようになってからは、ほとんど車両基地に留置されている状態となりました。万が一のラウンジカーの故障に備えて待機していたようですが、実際にはカヤ27形が必要となる事態は起こらなかったよう。本線上で見られたのは、訓練列車や検査入場で走行する際のみでした。

「カシオペア」は、この6月で営業運転を終了。そのため、カヤ27形も、他の「カシオペア」12両とともに、引退すると考えられます。

ちなみに、かつてのブルートレインとして製造された車両で、2025年度に入ってもJRの保有車両として残っているのは、このカヤ27形と、JR東日本が保有している食堂車の、計2両のみ。食堂車のオシ24-701は、カヤ27形と同じく尾久車両センターに留置されていますが、車体には錆が目立っており、本線上での運用を想定した状態ではないようです。塗装としての最後のブルートレインはオシ24-701ということになりますが、ブルートレインとして製造され、現在も本線上を走行可能な車両としては、カヤ27形が最後の存在となります。

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