6月9日、西武鉄道が池袋線とJRの武蔵野線の直通運転を目指しているというニュースが報道されました。所沢駅と新秋津駅を結ぶ連絡線を活用する形で、2028年度をめどに実現を目指すというものです。

西武鉄道は、連絡線を活用した臨時列車の運行に向け、両者で検討を実施していると説明。直通形態については調整中で、現時点で公表できる情報はないとしています。
5月15日に開催された西武ホールディングスの2025年3月期決算説明会では、同社代表取締役会長兼CEOの後藤高志氏が、この直通運転に言及していました。後藤氏は、「具体的には、西武池袋線の秋津駅と、それからJR東日本の武蔵野線の新秋津駅、ここの所をぜひ相直をしたい」と、JR東日本との協議を進めていく考えを示しています。
後藤氏は、西武とJR東日本の間で、相直、つまり相互直通運転を目指す方針を示しています。西武鉄道の広報担当者は、詳細は先の通り調整中と話すに留めているのですが、水面下では、少なくとも西武としては、数回で終わるイベント列車の運転ではなく、都市交通・沿線事業のさらなるバリューアップを進めることを目的に、本格的な直通運転を目指しているようにも捉えられます。
後藤氏はこの決算説明会で、もう一つの直通運転構想、西武新宿線と東京メトロ東西線の相互直通運転についても言及していました。

西武新宿線系統は、山手線との接続駅に乗り入れる大手私鉄路線としては珍しく、地下鉄との直通列車が運転されていません。8・10両編成という長編成が走る路線では唯一の存在です。また、ターミナル駅の西武新宿駅は、JR線などの新宿駅とは少し離れた位置にあり、JR線などの駅と一体になっている池袋線池袋駅と比べると、利便性が高いとはいえません。このような状況のため、沿線自治体などからは、以前から西武新宿線と東西線の直通運転を求める声が挙がっていました。

新宿線と東西線の直通運転については、2024年5月に開催された西武ホールディングスの2024年3月期決算説明会でも、株主から質問が挙がっていました。後藤氏は、質問に対する直接の回答ではないながら、説明会の中で本件について言及。前向きな方向性をにおわせつつ、「相手のあることですから、現時点においては当然のことながら確定的なコメントはない」と述べていました。
今回の2025年3月期決算説明会では、後藤氏は「東西線相直の話は、これからも私も含めてしっかりやってまいりたいと思いますが、これはぜひ実現させていきたいと考えております」と発言。西武グループとしては前向きであるとの考えを示しています。

とはいえ、これはあくまで筆者の考えですが、新宿線と東西線の直通運転が実現するとしても、実際の直通開始はかなり先になると考えられます。池袋線と武蔵野線の間には、新製車両の受け渡しなどに使用している短絡線が設けられており、地上側で大規模な工事を実施する必要はありません。一方、新宿線と東西線は、高田馬場駅で接続こそしているものの、線路は直接つながっていません。西武としては東西線との直通に向けて動く意思はあるようですが、新たに連絡線を整備するのであれば、それ相応の期間が必要になるものと思われます。