現在、東急大井町線の各駅停車で運用されている9000系。同形式の「正面帯色復刻」というニュースが入ったのは、2025年4月のことでした。

9000系の登場時のデザインは、正面と側面に赤い帯が入るというものでした。当初、同形式は東横線と大井町線に配置されていましたが、2013年までに全編成が大井町線に集結。これに前後して、先頭部の帯は、同線独自デザインであるオレンジ・イエローのグラデーションに変更されました。先頭部分が赤帯の9000系は、それ以来十数年ぶりの復活です。
東急電鉄のプレスリリースには「帯色復刻の対象は9001編成」とあり、同編成は4月中旬から、昔ながらの赤帯スタイルで運用に入っています。ところが、同月下旬には9015編成が、5月中旬には9013編成が、赤帯スタイルに復刻されました。復刻スタイルの思いがけぬ「サプライズ増加」に、SNSでも驚きの声が見られました。

こうなると気になるのは、「復刻スタイルの車両は今後も増えるのか」ということ。また、9000系は東横線時代、「TOQ-BOX」と呼ばれる、虹や楽器、シャボン玉などのラッピングが施されたことがあり、こうした特別装飾の復活があるのかも興味深いところです。今回、東急に、9000系の復刻について話を聞きました。
まず、赤帯スタイルが3本に増えた理由については、「9001編成の復刻が好評だったため、9013編成、9015編成も追加で変更した」とのことです。なお、これらの編成が復刻の対象に選ばれた理由については、「9001編成は9000系の第1編成(トップナンバー)であることから。9013編成と9015編成は、車両の運用と作業工程を鑑みて選定した」と説明しています。
そして、今後の赤帯仕様の増加、過去のラッピングデザインの復活の有無については、ともに「予定はない」とのことでした。
当初の発表よりも多く、3本が往年に近い姿に戻された9000系。複数の車両が赤帯に復刻されたことで、「赤帯同士の並び」を見ることもできるようになりました。9000系は、新造車両への置き換えが迫るほか、「サステナ車両」として西武鉄道への譲渡も控えています。往年の姿を思い起こさせる赤帯は、「東急9000系」として最後の晴れ姿といえるのかもしれません。
