ゴールデンウィーク期間中には、「ガッツリ遠出します!」という方もいれば、「近場でなんとか……」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。筆者は後者の人間なのですが、そんな「近場で」という気持ちに応えてくれるローカル線が、関東圏にはいくつも存在します。
日帰り旅行でも、都市部とは全く異なる雰囲気を楽しめる。そんな首都圏の「近場のローカル線」たちをご紹介します。

新たな観光列車もデビュー 千葉県「銚子電鉄」
まずご紹介するのは、千葉県の東端、銚子市を走る銚子電鉄。「ぬれ煎餅」や名物社長などで知られている会社です。銚子電気鉄道線は、JR線と接続する銚子駅と、小さな港町に近い外川駅を結ぶ路線。全線を乗り通しても20分ほどという小さな路線ですが、トコトコと走る列車が首都圏では珍しいからか、普段から多くの観光客が訪れています。

同社が営業運転で使用している車両は、すべて中古の車両。これまでは京王→伊予鉄道と渡り歩いてきた車両が主力だったのですが、2024年3月には、関西の南海から譲受した車両が運用を開始。そして2025年3月には、同じく南海から譲受し、観光列車に改造した「次郎右衛門」も運用を開始しています。車両の運用はランダムのようですが、運がよければ、関東の路線にも関わらず、関西の雰囲気を楽しめるかもしれません。

余談ですが、終点外川駅の一つ手前、犬吠駅の近くには、犬吠埼灯台や、「地球の丸く見える丘展望館」といった観光スポットがあります。また、岩に波が打ち付ける、東映のオープニング映像も、犬吠埼で撮影されたものだそうです。
手軽に乗れるディーゼルカー 千葉県「小湊鉄道」
同じ千葉県では、小湊鉄道も有名です。小湊鉄道線は、JR内房線と接続する五井駅と、房総半島の中央にある上総中野駅を結ぶ路線。上総牛久駅付近までは郊外の平坦な地域を走りますが、そこから先は山の中に分け入っていくという、二面性のある沿線風景も楽しみの一つです。

小湊鉄道線は、電化はされていないため、定期列車はすべてディーゼルカー。東京都心から手軽に行ける範囲でディーゼルカーに乗ることができる路線の一つです。主力の車両は、1961年にデビューしたキハ200形。今となってはレトロな機器を搭載し、懐かしく重厚感のある音や乗り心地を楽しめます。このほか、JRから譲渡されたキハ40形も運用中。こちらはボックスシートが搭載されているため、小旅行気分が楽しめる車両です。


さらに同社では、「房総里山トロッコ」というトロッコ列車も運転しています。窓のない開放感のある車両を機関車が引っ張る列車で、房総の風を肌で楽しめる列車です。なお、同列車の乗車には、運賃のほか、指定席券料金が必要となっています。

SLも、それ以外の車両も魅力 埼玉県「秩父鉄道」
北方面では、秩父鉄道線が手軽に乗りに行けるローカル線の一つ。羽生~三峰口間を走る秩父鉄道秩父本線は、寄居駅付近までは平地を走りますが、同駅以西は山間部に分け入っていきます。秩父はメジャーな観光地で、のんびりとしたローカル線といった雰囲気ではありませんが、やはり都会とは異なる風景が楽しめます。アクセス手段が複数あるのも特徴で、羽生駅では東武伊勢崎線、熊谷駅では上越新幹線と高崎線、寄居駅では八高線と東武東上線、御花畑駅では西武秩父線(西武秩父駅と徒歩連絡)と接続しています。

秩父鉄道の車両の目玉といえば、SL「パレオエクスプレス」。首都圏を走るSL列車の一つで、大迫力の走りが楽しめます。また、急行「秩父路」用車両は西武、その他の一般車両は、東急や都営地下鉄三田線で活躍していた中古車両。SL以外でも、少し懐かしい旅が楽しめます。


秩父鉄道線沿線には、長瀞渓谷や宝登山ロープウェイ、ふかや花園駅近くのアウトレットなど、見どころが多数。秩父といえばウィスキー「イチローズモルト」も有名で、秩父駅周辺などではこのお酒を提供している店舗もあります。
中央線でも走る形式が…… 東京都「青梅線」
西方面では、JRの青梅線がお手軽です。青梅線は、立川~青梅間は中央線との直通列車も多く、一般的な郊外路線そのものです。しかし、青梅駅から先は、渓谷区間へと入り、雰囲気が一変。終点の奥多摩駅まで、多摩川に沿って山の中を進みます。車両は中央線でも見られるE233系ですが、東京都ながら自然豊かな風景が車窓に広がります。


都会のローカル線 神奈川県「鶴見線」
東京都心に近いところでは、神奈川県の川崎市・横浜市を走る鶴見線も魅力的です。工業地帯を走る鶴見線は、平日ラッシュ時はかなりの混雑が見られる路線ですが、平日日中や土休日は、比較的閑散としています。鶴見小野駅付近までは住宅街の中を走る鶴見線は、弁天町駅付近からは工業地帯に突入し、車窓が変化。一般的な郊外路線では見られないような雰囲気がただよいます。

鶴見線は、それぞれの駅も魅力的です。終点の一つである海芝浦駅は、海(運河ですが)沿いにあることで有名。別の終点である扇町駅では、駅にネコが集まることで知られています。このほか、ガード下がレトロな雰囲気の国道駅、小さいながらも風格のあるドーム屋根が設けられた鶴見駅など、各駅が特徴的です。

なお、鶴見線は鶴見~扇町間の本線のほか、浅野~海芝浦間、武蔵白石~大川間の2つの支線があり、鶴見駅を発着する列車の行き先はすべて同じではありません。また、日中時間帯は鶴見駅基準で20分間隔の運転で、途中駅止まりの列車や、途中で別方面に分岐してしまう列車も。時間帯によっては、次の列車が来るまでかなりの待ち時間が発生することもあります。