鉄道車両のうち、通勤用などの一般形車両で見られる吊り革。そのデザインや形状は車両ごとに多様ですが、中には趣向を凝らしたものがあります。それらは、実際につかむ楽しさに加え、見た目も一興。そんな一風変わった吊り革の中から、今回は生き物や動物キャラクターをモチーフにした例をご紹介します。
1つめは、鹿。2022年12月、2023年4月に順次デビューした近鉄のラッピング列車「ならしかトレイン」は、その名の通り、奈良の風景と鹿などをデザインしたもので、車内も車体も鹿づくしなのが特徴です。吊り革は、丸みを持たせた鹿をサヤの部分にはめたデザイン。それがズラリと並ぶ仕掛けになっていて、走行中に揺れると鹿が躍動しているように見えるのがポイントです。


2つめの吊り革は、アユ。岐阜県の大垣~樽見間を走る樽見鉄道の観光車両「ねおがわ」に設置されています。同車両は、既存車両を改装したもので、2017年11月に運転を開始。沿線を流れる根尾川を泳ぐアユをモチーフに、木製の吊り手と一体化したデザインになっています。先頭部を前に見た時、右列のアユが進行方向と同じ向きになるのも見どころです。

3例目は、ネコ。ネコの顔形を持ち手本体にあてはめたもので、大手私鉄では東急と相鉄で見られます。東急世田谷線で2019年5月に登場した2代目「幸福の招き猫電車」の吊り革は、招きの手が付いたデザイン。相鉄では、2017年3月に同社グループの100周年を記念して取り付けられたものが最初で、相鉄のネコキャラクター「そうにゃん」の丸顔を模しているのが特徴です。「そうにゃんトレイン」などで見ることができます。


このほか、舞浜リゾートラインのモノレール車内には、世界的なキャラクター「ミッキーマウス」の顔をかたどった吊り革があり、小田急では、子育て応援マスコットキャラクター「もころん」をモチーフとしたウサギ型の吊り革を「もころん号」に取り付けています。また、今年4月にデビュー予定の銚子電気鉄道の観光列車「次郎右衛門」には、イワシなどの魚をイメージした吊り革が設置されます。
娯楽や観光の一環として、こうした吊り革を楽しむ旅、いかがでしょうか。