旧国鉄の在来線の電化は、東海道・山陽本線などは直流で、東北方面、北陸方面、北海道、九州は交流で進められました。この2つの電化区間を直通するには、両方の電化方式に対応した交直流車両が必要です。
国鉄では、1960年に関門トンネル用のEF30形、1962年に初の本格的な交直流電気機関車であるEF80形を開発。そして、1968年に交直流電気機関車の決定版として登場したのが、EF81形電気機関車です。

日本の在来線では、一口に交流電化といっても、50ヘルツと60ヘルツという2つの周波数が採用されており、50ヘルツ専用車は60ヘルツ区間へ(その逆も)直通することはできません。特に、北陸本線や羽越本線、奥羽本線などから構成される、大阪~新潟~青森間の「日本海縦貫線」では、直流電化区間と交流50ヘルツ電化区間、同60ヘルツ区間が混在しており、直通運転するには3つの方式に対応する必要がありました。
そうして開発されたEF81形は、直流電気機関車のEF65形をベースとしつつ、3つの電化方式に対応。日本海縦貫線や常磐線、九州地区に投入され、各所の貨物列車や客車列車の先頭に立ちました。国鉄分割民営化では、JR東日本、JR西日本、JR九州、JR貨物の4社に配置され、JR東日本の車両は寝台特急「カシオペア」「北斗星」、JR西日本の車両は寝台特急「トワイライトエクスプレス」の運用にも就いています。

当初はローズピンク色の車両(基本番台)が投入されていたEF81形ですが、その後はさまざまなバリエーションも登場しています。
特に特徴的なのが、銀色の車体を持つ300番台。関門トンネルの走行時、トンネルから漏れてくる海水による塩害を防ぐため、ステンレス車体を採用したもので、4両が九州地区に配置されました。ただし、4機とも本州で活躍した時期があり、うち2両は常磐線時代、ステンレス車体ながら0番台同様のローズピンクに塗装されていました。

国鉄型機関車のEF81形ですが、JRグループ発足後の後継機による貨物需要増大で、JR貨物でも新規製作された車両がありました。九州地区用に新製された450番台のうち2両は、他のEF81形と異なり、ライトが角形になるという変更が加えられており、300番台とならんで九州地区の特徴的なEF81形となっていました。
本州と九州で幅広く活躍してきたEF81形も、客車列車の廃止や老朽化によって、次第に数を減らしていきます。JR東日本では2010年の「カシオペア」「北斗星」へのEF510形投入で、JR西日本では2016年の「トワイライトエクスプレス」廃止で、JR九州では2009年の「はやぶさ」「富士」廃止で、それぞれ定期運用を終了。すでにJR西日本とJR九州では形式消滅しています。JR貨物の車両も、最後まで残っていた九州地区のグループが、2025年3月のダイヤ改正で定期運用を喪失しました。
5月現在、EF81形が残るのは、JR東日本とJR貨物のみ。いずれも定期運用はありませんが、前者は団体臨時列車「カシオペア紀行」や回送車両のけん引(配給輸送)などで時折運用されています。また、3月のダイヤ改正で定期運用を喪失したJR貨物のEF81形も、ダイヤ改正後もしばらく運用に就く姿を見せていました。

とはいえ、JR貨物の車両を置き換えるために投入されたEF510形300番台は、すでに所要数の投入が完了しています。JR東日本でも、車両けん引用としては後継車両のE493系がデビュー済み。「カシオペア」も今後引退するとの報道があるため、EF81形の引退もそう遠くはないのかもしれません。