かつてはスタンプ帳やラリー台紙にスタンプを集める方式が普通だった「スタンプラリー」。しかし、近年ではデジタルデバイスの普及によって、スマートフォンなどを活用するデジタルスタンプラリーも広がっています。鉄道業界でも例外ではなく、さまざまなタイプのデジタルスタンプが登場しています。

現在、かなりの勢力をほこっているのが、JR東日本グループが展開している「エキタグ」。スマートフォンでNFCタグを読み取ることでデジタルスタンプを集めるというものです。こちらはスタンプラリーではなく、以前から各駅に設置されていた「駅スタンプ」をデジタル化したもの。そのため、賞品が用意されているラリーが全駅で常時開催されているわけではないのですが、地域別、会社別などで、エキタグを使用したスタンプラリーが開催されていることがあります。

エキタグの導入事業者は、2025年4月現在で87社・施設。JR北海道、JR東日本、JR東海、JR四国、東武、京王、近鉄、京阪、南海、西鉄といったJRグループ・大手私鉄をはじめ、ロープウェイを含む全国のさまざまな私鉄、さらには鉄道博物館、リニア・鉄道館も導入しています。
鉄道会社の総合アプリ内の機能として、デジタルスタンプラリーが提供されていることもあります。たとえばJR西日本では、同社の移動生活ナビアプリ「WESTER」で、さまざまなデジタルスタンプラリーを展開。2025年4月時点では、「北陸新幹線10周年・1周年記念デジタルスタンプラリー」や「ぶらり加古川線WESTERスタンプラリー」などが開催されています。

鉄道事業者以外の会社が開発したアプリを活用し、デジタルスタンプラリーを開催する例も見られます。腕時計「G-SHOCK」などで知られるカシオ計算機は、デジタルスタンプラリーなどを楽しめるアプリ「MEGURUWAY」を開発し、自治体や博物館などとコラボした企画を展開しています。その中には、東京都品川区や区内に乗り入れる鉄道各社がコラボした企画など、鉄道がテーマのものも。2025年4月現在も、鳥取県を走る若桜鉄道の企画「若桜鉄道トレインスタンプコレクション」が、5月末まで開催されています。

このほか、ワンズが開発したデジタルスタンプラリーアプリ「furari」も、鉄道スタンプラリーに採用されてきました。2025年4月現在、同アプリを使用した鉄道スタンプラリーの開催はないようですが、過去には関東民鉄協会や荒川区(区内の鉄道が対象)、南阿蘇鉄道などで、同アプリによるイベントが開催されています。
変わり種としては、ゲームアプリを使用したデジタルスタンプラリーも開催されています。「ステーションメモリーズ!ー駅メモ!」は、位置情報をもとに駅に「チェックイン」したり、キャラクター(でんこ)を育てるといった楽しみ方ができるゲームアプリ。近年は鉄道事業者とのコラボ企画も広まっており、指定駅にチェックインすることで、ゲーム内のアイテムだけではなく、リアルな記念品も貰えるというイベントが、時折開催されています。

紙にスタンプを集めるスタンプラリーは、リアルで集める楽しさや、捺印時の感触など、独特の魅力があります。一方で、デジタルスタンプラリーもまた別の魅力があり、両者は優劣をつけられるものではありません。
デジタルスタンプラリーでは、ただ単にスタンプを収集するだけではなく、謎解き要素を絡めたものなど、従来のスタンプラリーとは異なる方法を採用しているものも。デジタル化の進展で、これまでとは違った楽しみも提供されるようになっています。