かつて、国鉄やJR各社では、「ジョイフルトレイン」と呼ばれる車両を数多く保有していました。しかし、原義のジョイフルトレインといえる現役車両は、今や西日本に残るのみとなっています。

ジョイフルトレインは、元々は団体輸送用に適した車両として、国鉄時代に登場しました。ほとんどが余剰となった客車や電車を改造した車両でしたが、原型車両からは大なり小なり手が加えられており、大規模なものでは展望室や個室、お座敷などが設置され、通常の車両とは大きく異なる接客設備となっていました。また、基本的には1編成ごとに別々の仕様とされており、バリエーションが豊かなことも特徴でした。
そんな国鉄時代に登場したジョイフルトレインで、2025年現在も唯一生き残っているのが、JR西日本の「サロンカーなにわ」。14系を改造して1983年に登場した車両です。室内にはリクライニングシートを設置していますが、特急用車両のような一般的な配置ではなく、グループ利用も想定したユニークな配置。さらに両端には密閉式の展望室があり、往年の特急「燕」(ただし同列車の展望室は開放式)の最後部のような雰囲気が楽しめます。


団体臨時列車や観光列車をメインに使われる車両は、現在も数多く存在しています。しかし、国鉄時代やJR初期に登場した車両のように、サロンやお座敷、ディスコといった、団体輸送向きの設備を持つものは、今やほとんど存在していません。国鉄時代に登場したようなジョイフルトレインに代わり、近年よく見られるのが、いわゆる観光列車。「リゾート列車」(JR北海道)や「のってたのしい列車」(JR東日本)、「D&S列車」(JR九州)と、各社でさまざまな名前がつけられています。
しかし、時代が下り、団体輸送需要が減少すると、この手の車両の需要も減少。車両の老朽化も相まって、ジョイフルトレインは次第に数を減らしていきました。その代わりに登場したのが、
現代の観光列車は、定期的に走る列車に用いられるものが多数。リクライニングシートを設置しただけの車両から、レストランのような設備を備えたものまで千差万別です。もちろん、ジョイフルトレインでも団体列車以外に使われた例はあり、その逆もあります。また、現在でもE655系「和」(なごみ)のように、団体臨時列車(お召列車含む)でしか使用されない車両も存在します。
しかし、現代の波動輸送用車両たちと、国鉄→JR初期に登場したジョイフルトレインたちの間には、想定する利用者像に大きな違いがあります。ジョイフルトレインの明確な定義はありませんが、かつてのような団体臨時列車向け車両がジョイフルトレインだとすると、それは今ではほぼ消滅状態となります。
最後のジョイフルトレインらしいジョイフルトレインとなった「サロンカーなにわ」は、関西地区の代表的なジョイフルトレインとして40年以上も活躍してきました。しかし、車両は古い世代で、けん引する機関車も老朽化が進んでいるため、今後も安泰とはいえない状況です。これまで同編成の去就について発表されたことはありませんが、今後も長く活躍する、とは言い切れないのが現状です。