レイルマン中井の『ペンタックス K-5』で撮るワンランク上の鉄道写真 | 第二回 使いこなすと撮影の幅が広がるペンタックスK-5 作例 中井精也 文/取材 シバタススム | 前回は『K-5』のカメラとしての基本的な部分の紹介として、1628万画素の高画素やファインダー視野率約100%を利用した構図の作り方、連写秒間7コマを紹介した。今回は鉄道写真をより高画質に、より撮りやすくする『K-5』の優れたカメラ性能を紹介していく。 作例は前回に引き続き、"レイルマン中井"こと中井精也カメラマンだ。今回は中井カメラマンの"流し撮り"テクニック講座のほか、ペンタックスカレンダーのロケ地の一つ秩父鉄道を訪ね、撮影秘話も紹介する。

ISO感度1600でもクリアーな画質

撮影モードマニュアル
焦点距離60mm
シャッター速度1/125
絞り数値F5
ISO感度1600

秩父鉄道1000系の車内に残る国鉄のJNRマーク。ISO1600で撮ってもシャープさは全く失われていない。また、周辺の暗い部分には従来のカメラであれば、ノイズが乗ってくるところだが殆ど見られない。

鉄道写真を撮る場合、いつも明るく状態の良い場所で撮れるとは限らない。保存車輌の室内や、暗めの車庫の中などでは手持ちで撮るとシャッタースピードが稼げずに、手ブレしてしまうことがある。このような場合にはISO感度を上げることで、シャッタースピードを上げられる。しかし、ISO感度を上げすぎると、従来のカメラでは全体のディテールが甘くなり、しかもカラーノイズまで発生する。この悩みを解消してくれるのが、『K-5』の高感度性能だ。

『K-5』は標準でISO100~12800、さらに拡張設定でISO 80~51200までをカバーする。この性能があれば、暗めの車内でISO感度を1600まで上げて撮っても、シャープ感が失われないばかりか、ノイズは発生が殆ど分からないほど。さらに、ISO12800では夜間に止まっている列車を手持ちで撮ることもできる。『K-5』では、さらにボディ内に手ぶれ補正機構も搭載しており、どんなレンズを付けても手ぶれ補正をすることができる。暗い環境での撮影では、この手ブレ補正を併用することにより、手持ちでシャッタースピードが遅い場合でも手ブレを抑えることができる。この高感度と手ぶれ補正機構は暗部撮影に大きく役立ってくれる。

他にも高感度性能は様々な用途に使える。例えば、新幹線の走行写真を撮るときのように通常よりもシャッタースピードを上げたい場合や、曇天時の撮影などでシャッタースピードが晴天時より低速になる場合でも、ISO感度を上げることで、シャッタースピードを上げることができる。今までは絞りを開けてシャッタースピードを上げていたシーンでも開けずに撮ることができるのは嬉しいところだ。さらに、どうしてもシャッタースピードが上げられない暗い場所でも手ぶれ補正機能により、格段に手ブレが少なくなる。夜の駅など手持ちで撮らなければならない場合に、より成功写真を得やすい。

撮影モードマニュアル
焦点距離135mm
シャッター速度1/80
絞り数値F5.6
ISO感度1600

ED38の運転台部分。ISO感度を上げることで、運転室内のような少し暗めの場所でもシャッタースピードを確保できる。しかも作例を拡大して見ると、高感度特有のノイズがなく、金属の質感が感度を下げて撮ったようなリアルに写し取れている。

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AF11点とライブビューで自由にAFできる自由度の高さ

走行写真を撮るときには、"置きピン"と呼ばれる車輌がベストな構図位置に来たときにピントが合うように調整して撮っているケースが多いのではないだろうか? 『K-5』であれば、"置きピン"をする必要はもうない。100キロ前後で走ってくる列車に対し、カメラが自動的に動体を追尾してフォーカスを合わせる"コンティニュアスAF"でも正確にフォーカスすることができるのだ。
実際にその例を見てみよう。

作例はカーブから進入する列車を正面から逆光状態で撮ったものだ。カーブにさしかかっている状態では、ほぼ真っ正面に列車が迫ってくるように見える。この場合、絵としては車輌前面が大きくなるだけなので、カメラの性能によっては"コンティニュアスAF"ではピントが合わせにくく、下手をするとフォーカスが前後に迷ってしまう場合がある。しかし、『K-5』は、全てのカットで正確にフォーカスを合わせており、AF性能が非常に高いことが分かる。
これは中央部に9点のクロスセンサーと左右に2点のラインセンサーを備えた計11点AFシステムによるものだ。

さらにライブビューを活用すれば、コントラストAFによりフォーカスポイントを画面内の任意の位置に設定できる。三脚使用時でもフォーカス位置を自由に設定しつつ、精度の高いフォーカスが可能だ。コントラストAFは写真内のコントラスト比を検出してフォーカスするため、フォーカス速度の遅さが欠点だったが、『K-5』では大きく改善され、一瞬でフォーカスが合うようになった。

「コンティニュアスAFは慣れないから、やっぱり置きピンしたい」という場合にはライブビューとコントラストAFを併用することで、ピントを合わせた位置で正確なフォーカスができるため、置きピン時のフォーカス精度が高くなる。
『K-5』のフォーカス性能を使いこなせば、ピンぼけ写真を作る確率は極端に低くなるのは間違いないだろう。

中井カメラマンのワンポイントアドバイス!
この作例では、フォーカスポイントを架線に合わせて『置きピン』してます。液晶モニターに表示された画像のなかで、どこら辺に列車の正面がきたときにシャッターを切るかを予め想定しておきます。そして、その部分の架線にピントを合わせれば、列車にピントをピタリと合わせることができますよ。これもフォーカスエリアが自由に設定できるからこそできる『置きピン』です。

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電子水準器・自動水平補正で水平を作るのが楽に

夢中で列車を追いかけていると、ついカメラの水平位置がうまくできずに傾いた写真になってしまうことがある。また、三脚にカメラを設置して撮影する場合に、水準器で水平を合わせたつもりでも、撮ってみると微妙にズレている。そんなケースを経験した読者も多いのではないだろうか?
『K-5』はこのような場合にも助けてくれる優秀なカメラだ。

傾きを自動補正できる!

『K-5』はなんと写真の傾きを検知して自動的に補正する機能を搭載している。以下の中井カメラマンの作例を見て欲しい。

手持ちなどで撮影した場合、このような微妙に傾いた写真になる場合がある。駅の屋根を見てみると、やや傾いているのが分かる。しかし、同じ位置で傾き補正機能を使うと・・・

このように、上の写真では左下がりになっていた写真が自動的に水平が補正されて、駅の屋根が水平になった。
実際に試してみると、約2度前後の傾きを水平に戻してくれる。うっかり、傾けてしまうことが多いならば、ぜひこの機能を使って欲しい。

水平を正確に表示する電子水準器

三脚にカメラを据えたときに便利なのがこの機能だ。三脚でカメラ位置を調整するときに、以下のような水準器をカメラの液晶に表示させることができる。

この水準器は左右にカメラが傾いているときには、中央のラインで傾きを警告してくれる。また、右隣のメーターはカメラの上下の傾きを表示する。微妙な傾きでも繊細に検知して教えてくれるので、傾きを作らないようにカメラを設置できる。上の自動補正と組み合わせれば、間違って傾き写真を作ることはなくなるに違いない。なお、ファインダーで撮影時も左右の傾きを知らせてくれる水準器が表示できる。

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レイルマン中井がゆく『2011年版ペンタックスカレンダー』はこうして作られた! 秩父鉄道編

中井カメラマン:ペンタックスカレンダーの7月は一面の花畑と小さな踏切にしました。実はこれは秩父鉄道の野上~長瀞間にある、農家の花畑なんです。秩父鉄道はSLパレオエクスプレスが走っているので、訪れる観光客も多くて沿線の農家は景観作りのため花を植えているんです。この花畑もその一つですね。秩父鉄道は旧国鉄の101系(現1000系)がまだ現役で走っているので、私のお気に入りのポイントの一つです。

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カレンダーでは夏の花畑だったが、今回訪れたのは11月。当然花畑もなく、荒れ地に近い状態だったため『K-5』で同じカットを撮ることはできなかった。しかし、中井カメラマンはこの状況でも『K-5』で素晴らしい作品を作ってくれた。

撮影モードマニュアル
焦点距離250mm
シャッター速度1/500
絞り数値F4
ISO感度100

近距離の雑草を通して遠距離の踏切を撮影。まるで緑色の絵の具を塗り重ねたような、写真とは思えない幻想的な作品。本作例は草木の緑越しに撮影し、『K-5』のデジタルフィルター機能「パステル」で加工したもの。とてもカメラだけで加工したものとは思えない作品だ。

ちなみに、実際の撮影風景は下の写真だ。パッと見では草木を撮っているように見えるが、草木を巧みに利用した中井マジックの現場。
『K-5』は撮る人の腕によりいくらでも写真の可能性と表現力を広げてくれるカメラと言えるだろう。

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コラム | レイルマン中井の撮影テクニック講座その2 動画で紹介!コレが”流し撮り”の奥義だ!

総武本線 物井~佐倉間の通称"モノサク"は開けた平野に線路がカーブを描いて横切る撮影の初心者から上級者まで楽しめる名所だ。ここでは、カメラで列車を追える区間が長いため、列車の動きに合わせてカメラを動かし、背景が流れたように撮る"流し撮り"がやりやすい。中井カメラマンが"流し撮り"のコツを動画で解説してくれた。

中井カメラマンが"流し撮り"を音声で解説
※この動画も『ペンタックス K-5』で撮影。

撮影モードマニュアル
焦点距離140mm
シャッター速度1/80
絞り数値F18
ISO感度100

ピントはE259系にしっかり合いつつも、背景は綺麗に流れている。コツをしっかりマスターすれば、難しいと思いがちな"流し撮り"もしっかり撮れるようになる。

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中井カメラマンプロフィール

中井 精也
(なかい せいや)
1967年10月東京生まれ

小学校6年のときに父親からカメラをもらったのがきっかけで鉄道写真を撮り始め現在に至る。中学から大学までずーっと鉄道研究会に所属する筋金入りの鉄ちゃんでもある。大学卒業後、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。雑誌、広告撮影のほか、テレビ出演、「JAL旬感旅行」の鉄道写真ツアー講師など幅広く活躍している。2004年春から毎日必ず一枚鉄道写真を撮影する「1日1鉄!」(ブログ)を更新中!鉄道の旅の臨場感を感じさせる写真を撮りたいといつも考えている。
社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
日本鉄道写真作家協会(JRPS)副会長
ブログ『1日1鉄!』 >>

PENTAX K5 スペック

有効画素数
約1628万画素
連続撮影速度
最高約7コマ/秒
ISO感度
ISO100~12800、カスタム設定により拡張ISO80~51200使用可能、バルブ時はISO1600まで
動画撮影機能
フルHD(最高1920×1080 25fps)
Motion JPEG(AVI)
ファインダー
ペンタプリズムファインダー 視野率約100%、
倍率約0.92倍(50mmF1.4レンズ、∞)
液晶モニター
3.0型 約92.1万ドット 反射防止ARコート
カスタムイメージ
鮮やか、ナチュラル、人物、風景、雅(MIYABI)、ほのか、モノトーン、 リバーサルフィルム、銀残し
サイズ/重量
131(幅)×97(高さ)×73(厚さ)mm/約660g(本体のみ)
ラインナップ
・K-5 ボディ
・K-5 18-135レンズキット
 ※smc PENTAX-DA18-135mm
 F3.5-5.6ED AL[IF]DC WR(フード付き)が付属
・K-5 18-55レンズキット
 ※ smc PENTAX-DA18-55mm
 F3.5-5.6AL WR(フード付き)が付属
公式サイト PENTAX K5

DA18-135mmF3.5-5.6ED AL[IF] DC WR

画角
76~11.9度
構成枚数
11群・13枚
最小絞り
F22-F38
最短撮影距離
0.4m
フィルター径
62mm
最大径×長さ
73×76mm
質量 (重さ)
405g

DA18-55mmF3.5-5.6AL WR

画角
76~29度
構成枚数
8群・11枚
最小絞り
F22-F38
最短撮影距離
0.25m
フィルター径
52mm
最大径×長さ
68.5×67.5mm
質量 (重さ)
235g